先日、よく見るこんな工事現場に出くわしました。
テレビコマーシャルなどで知っている方も
いるかともいますが、大手ハウスメーカー建物で、鉄骨造の
ユニットを積み上げる建物の工事です。
本当にあっという間にできていきます。1ユニットがトラックで
運べる大きさになっており、それを敷地に持ってきては、クレーンで
積み上げていくというのもの。積み上げたユニット同志は金物で
つないで固定をし、たぶんあとは何らかの防水処理をして完成
なのかと思います。
これだけ有名な工法でありながら工事現場をなかなか目にする
ことがないのは本当に上棟作業(上棟と呼ぶのかは分かりませんが)
が一瞬だからでしょう。
ユニットは工場で作成するようで、流れ作業の中で家ができていきます。
工場の写真をみると、車を作っているかのような雰囲気が漂っています。
合理化された家づくりを極めるとこのような形になるのでしょう。
テノアト設計工舎ではリノベーションや新築に関わらず注文住宅・建築を手
がけていく予定ですが、住宅はもはや家が余ってしょうがないくらい産業
として成熟しきっています(衰退とは言いわない)、そしてその産業内でも、
他と同じくその中で棲み分けがされています。その中で多数を占めるのは
○○ハウスや○○林業などの大手ハウスメーカーで、さらにそこから
販売されるプレハブ住宅になると、関東圏では新築住宅の着工数の
15~20%近くを占めるようです。どうりで街中でよく見るわけです。
そのプレハブ住宅、1960年代に住宅需要が拡大する中、名だたる
住宅メーカーの若い技術者が、安く安定的に住宅供給ができるように
研究開発がされたようです。必要に迫られて進められたわけですね。
安く作るには大量生産が当然必要で、車のように工場でライン生産がされ、
現地に運ばれるまでの流通経路、ユニットの運搬まで徹底的な研究がされて
いたようです。しかし作る技術は確立されてもそれほど価格は落ちずに、
売れ行きは伸び悩んだそうです。理由は自由設計に対応できず、対応しようと
した場合に価格のメリットが生かせなかったから。当初は利用者の日々の生活の
ニーズにまだ技術が対応できなかったようです。しかし研究は続けられ、最初に書いた
ように世に通用するプランや価格を実現し、認知がされています。
プレハブ住宅を作る機会はなかなかなさそうですが
良い住宅にローコストで、そしてたくさんの人に住んでもらいたいという
マインドは私たちも一緒で、その姿勢、企業努力に学ぶことは多くあります。
こうした努力を目にすると、いわゆる建築家の、付加価値がデザインに特化される
オリジナル住宅を通して、自由設計や注文住宅が高く贅沢だと認知されてしまう
のは、価格に対する努力の乏しいこのタイプの住宅の悪しき部分だとよくわります。
そして最近のDIY・セルフリノベーションの流行は、自由に造る住まいを贅沢品から
手の届く嗜好品にかえる大きなムーブメントだと思います。
よく言う「開かれたデザイン」として専門と非専門の垣根がなくなるのは
この仕事を生業にしている者として脅威ですが、住まいづくりが大きく開
かれるのは作り手として歓迎すべきことだと思います。
〜DIY・セルフビルドを設計に取り入れる大磯の設計事務所テノアト設計工舎 岸田壮史〜
大磯町・二宮町・平塚市・小田原市・秦野市・中井町など西湘地域を中心に参加型の家づくりを提案します。