一品ものの住宅ゆえに、注文住宅の場合建てるとなると施主の思いや趣向
がこれでもかと家の中に当然入り込んできます。クロスの色は・・・キッチン
の水洗の使い勝手が・・・フローリングの木の種類は・・・家を構成する要素の
数だけ決めごとがあり、その積み上げが実態として家の最終形になります。
しかし手造りとはいえその建材の一つ一つは市場に一般的に流通する物が
ほとんどでその組み合わせに自由が効くことが注文住宅の条件となります。

しかしその建築を構成する部材すら自ら作ってしまう知る人ぞ知る建築家
が・・・。ジャンプルーヴェというフランスの建築家で、自ら工場をもち、部品
から建築を作り、本当に唯一無二の建築や家具をいくつも作りました。
当時からほかの建築家らもそのクラフトマンシップから「建設家」と呼ばれな
がら、近代建築史の中でも他に分類されない独特の立場にいたようです

面白いのが建築の設計や製作を専門の領域内で行うだけでなく。専門外
(いわゆる素人)でもDIY,セルフビルド製作できるような住宅キットまで手を
伸ばしていたいたところです。作れるものをまとめる建築家の仕事を、誰が
作るかまで広げたのです。

JP_201610_02

私も常々思うのですが、住宅建築に限って言えば、建築工事はとてもアナログ
なもので数々のアナログな工事が集積して出来上がってくのが現場にいると
よくわかります。こんなことを言っていいのかわかりませんがが程度の差はあれ
どれもまったく手出しができないほど難しいものではないのです。

難しく見せているのが専門性が高い(といわれている)建築と住宅業界の良くない
ところで、難しく見せているのは、建物の情報が専門の壁の中に閉じこもり整理が
されていないだけなのです。たぶん設計図をみても家の形と仕上げがどうだとか、
設備がどうだとかわかるのはその程度かともいます。プラモデルの設計図とはやっぱり
違うのです。一見整理されているようで不十分な情報が、いわゆる専門に閉じこもる
よく言う建築のブラックボックスの正体で不当に価格が高くなる建築の大元なのです

最初に戻りますが、それを作り手の立場から整理したのはプルーヴェの輝かしい
功績だと思います。

セルフビルドの流行も建築業界の凝り固まった慣習を打ち破ろうとする一つの動きです。
私たち設計者としてやることは、その領域を広げるべく、難しく見える情報を整理しながら、
作り方にまで理解の及ぶ設計をすることかと思います。そうすれば住宅は価格も姿
も間違いなく変わります。